カールという名前の由来は?
カール大帝の名前「カール」の由来についてはいくつかの見解がみられる。
何かを調べるときにもっとも手っ取り早いWikipediaの記事(仏語版)によると、「カール」はゲルマン人特有のファーストネームであり、古高地ドイツ語※1のkaralに由来し、「男」とか「男性性」とか「力強さ」を意味するという。おそらくこれが通説であるといってよいだろう。
一方で佐藤彰一は、「北海をはさんでベルギー地方と対峙する、イングランドの言語、アングロ=サクソン語の『ケオルルcoerl』に由来するのではないか」としている。「ケオルル」とは当時、自由人を意味する身分名称であったという※2。
カールという名前は、大帝の祖父に当たるカール・マルテルの名前でもある。彼らは大ピピンから始まるピピン一門(ピピニード)に属しているが、カール・マルテル以前にこの名をもつピピニードの構成員はいないらしい。佐藤は、カールという名前がピピニード由来のものではなく、カール・マルテルの母アルパイダによって(いわば母方の門閥から)持ち込まれた名前ではないかと推測している。アルパイダの一門はマーストリヒトに拠点を持つ一族であったが、同地はその当時マース川が注ぐ北海を舞台にした交易の中心地であった。カール・マルテルの父・中ピピンは、アルパイダとの結婚によって、大陸内陸部とイングランドとの交易を盛んにしようという意図を有していたのではないかというのが佐藤の見解である(下掲写真はインラインリンクで表示)。
↑Wikipededia(PD)より
そして佐藤は、「マーストリヒトのアルパイダが属した門閥にとって、アングロ=サクソン名の採用が自然なほど、北海を舞台としたイングランドとの交渉が濃密であったということではなかろうか」と述べている※3。
通説と佐藤説、どちらが歴史の真相なんだろうか。
※1 高地ドイツ語は今日のドイツ南部(オーストリアとの国境付近)で話されている言葉であり、アングロ=サクソン語(古英語)により近いのは、古フランク語・古ザクセン語などの古低地ドイツ語である。
※2 佐藤彰一『カール大帝』(山川出版社・2013)11頁。
※3 同書12頁。
