裏道の通勤ライド

ブレロ3号が生まれたので、最近まったくツーリングできていないが、そのかわり週に1度くらいは自転車出勤している。

 

職場のある四ツ谷に向かうためにブレロが定番にしているコースは、およそ下記の通りである。

 

鹿浜橋付近→王子飛鳥山→都電荒川線滝野川一丁目駅→谷田川通り→本郷通り(都道455号)→不忍通り(都道437号)→白山通り(都道301号)→外堀通り(都道405号):名付けて「白山通りコース」

 

このコースはとても走りやすい。とくに白山通りは自転車専用のとても長いナビラインが設けられているので、街路樹の下を気持ちよく走ることができる。地形的にも水道橋方面へはゆっくりと下りになっている(水道橋から四ツ谷へはまた上りになる)。

 

しかし、「白山通りコース」はほとんど表通りで構成されている(裏道と呼べそうなのは、滝野川一丁目駅から谷田川通りあたりまで)。裏道を愛するブレロは、Ride with GPSを使って、裏道をふんだんに使ったコースを新しく設定してみることにした。

 

それが下記のコースである。

 

都電荒川線滝野川一丁目駅→都電荒川線新庚申塚駅→折戸通り→山手線大塚駅→小石川西巣鴨線(都道436号)→筑波大学東京キャンパス→拓殖大学国際教育学館別館→江戸川橋→環状3号線(都道319号)→新宿歴史博物館→コモレ四ツ谷:名付けて「小石川西巣鴨通り」コース※1

 

環状3号以外は裏道といってよいと思う。ただ、環状3号も実際に走ってみると、表通りというような感じはそれほどしなかった。

 

このコースには、いわゆるフォトジェニックなスポットは存在しない。しかし、東京のどんな場所でも、その半径50メートルを生活圏にしている人たちがいて、独自の雰囲気を醸し出しているものだ。ブレロの裏道の美学は、そんな何気ない人々の生活の香りを味わいながら自転車を走らせることも、モットーの一つとしている。時代はかなり異なるけれども、永井荷風が東京をひたすら散歩していたのも、ブレロと同じような心持ではなかっただろうか。

 

彼の作品「日和下駄」の一節を引用してみる※2。

 

元来がかくのごとく目的のない私の散歩にもし幾分でも目的らしい事があるとすれば、それは何という事なく蝙蝠傘に日和下駄を曳摺って行く中、電車通の裏手なぞにたまたま残っている市区改正以前の旧道に出たり、あるいは寺の多い山の手の横町の木立を仰ぎ、溝や掘割の上にかけてある名も知れぬ小橋を見る時なぞ、何とはなくそのさびれ果てた周囲の光景が私の感情に調和してしばし我にもあらず立ち去りがたいような心持をさせる。そういう無用な感慨に打たれるのが何より嬉しいからである。

 

ともあれ、今日の通勤ライドは面白かった※3。すこし遠回りでもいいから、さらに裏道っぽい通勤コースを開発して、まだ見ぬ東京を味わってみようと思う。

 

 

※1 「小石川西巣鴨通り」コースは「白山通り」コースよりも走りにくいが、ブレロの自宅から目的地の四ツ谷までは直線に近いコースになる。

※2 永井荷風(1959年没)の著作権は消滅。

※3 本格的なツーリングではないので、この記事は「ライドの記録」ではなく「雑記」に記すことにした。